肩腱板断裂

肩腱板断裂とは?

肩腱板断裂は転倒して手をついたり、肩を強打したときに多く発生しますが、50才から60才代では自然に腱板が切れて肩が痛み出す場合があります。
腱板とは肩の関節を安定させる働きをもった4つ筋肉の総称です。
この筋肉の一部は肩関節の骨と骨の間にはさまれた所を通っていますので、使い過ぎによってすり切れることがあります。また経年化によっても腱が弱くなり切れやすくなります。ですからケガなどのはっきりした原因がない場合でも、日常生活の中で腱板断裂がおこることがあります。高齢者の20パーセントは自然に断裂しているといわれています。

肩腱板断裂(肩腱板損傷)の診断(特に四十肩・五十肩との鑑別)

四十肩の特徴

四十肩の特徴的な症状は肩の拘縮(こうしゅく)です。
痛みは、とっさに腕を上げた時や後ろに手をまわした時に痛みが生じます。
動作の終わりの部分で痛みがみられるのも特徴で、例えば腕を上げる際には、上げきったところで痛みが生じます。

腱板断裂の特徴

一方、腱板断裂の場合は腱が切れている状態ですから、腕を上げ始める段階から引っ掛かりや痛みが生じるといった違いがあります。

MRI 超音波検査

これらの検査は腱板の評価に有用です。
腱板断裂の有無、大きさの確認をすることができます。

腱板断裂の治療

腱板断裂と診断されたあとに、肩の痛みや、力が入らないなどの症状が強くなった場合は腱板断裂が大きくなっている可能性があります。その場合は整形外科を早めに受診してください。治療の目的は痛みをとること肩の不自由がなくなることです。腱板断裂の治療法にはいくつかの方法があり、患者さんの年齢、活動性、職業、断裂のサイズにより治療法を決定します。

非手術治療

腱板断裂の50パーセントの方は注射や飲み薬の治療により痛みが軽快します。しかし筋力低下は手術治療しないと改善しないといわれています。

  • 注射
  • 痛み止め
  • リハビリテーション 運動療法

欠点)筋力は回復しない 断裂は残存、ゆっくり大きくなる、スポーツ活動、生活を制限する必要がある

手術治療

  • 数か月非手術治療を行っても効果がない場合
  • 腱板断裂が3センチ以上の場合
  • 筋力低下が著しく、日常生活に不便がある場合
  • 転倒などの急性断裂の場合

手術法の選択

手術法は従来から行われている直視下法(オープン法)と鏡視下法があります。最近は手術侵襲の少ない鏡視下法を行う傾向にあります。当院でも鏡視下手術を積極的に行っており年間50-70例の鏡視下腱板修復術を行っております。

鏡視下腱板修復術

4-5か所の小さい切開で行いますので術後の痛みが従来法より少ないです。

最近のトピックス(リバース型人工肩関節について)

70歳以上の広範囲の腱板断裂で一時的な修復が不可能な方や、関節症変化が進んで肩関節の拳上が不可能な方に限って近年、リバース型人工肩関節がようやく日本でも使用可能となりました。リバース型肩関節はいままで難渋していた広範囲腱板断裂の治療において画期的な人工関節で術後成績も良好で全世界で使用されつつあります。
しかし日本ではまだ長期の治療成績や合併症の問題で治験的に使用され限られた施設でしか手術は受けられません。
当院ではリバース型人工肩関節の手術が可能であり規約にそった症例を厳選し手術を行っております。